
大学卒業後商社を経て、1979年リクルートに入社。企業の事業戦略を推進する為の人材情報誌事業に携わり、新宿支社長をはじめ、首都圏の営業部長、新規事業開発部長を勤める。
現在は、日本初のヒューマンリソースを活かしたインキュベーション事業会社インターウォーズ株式会社の代表取締役。各企業の30を超える事業開発インキュベーションや自治体の新産業創出のアドバイザーや講演活動等を行っている。事業創造大学客員教授 ニュービジネス協議会理事
第30回 自分ドメインの設定から未来の「ありか」が見えてくる
2001年01月15日
以前お会いした際、また会いたい余韻の残る人達が、大手企業中心に輝きを失っている人が増えているように思える。
どんなに才能があり地頭が良く人格豊かな人でも、自分が「どの分野で」、「どのような役回りで、強みを生かして活動をするのか」といった、企業でいうところのドメイン(事業領域)を設定しなければ、エネルギー集中が起こらず、自己表現できずに終わってしまう危険性がある。
自分のドメイン、つまり「生きる場」「活躍の舞台」を設定するには、自分をまず棚卸することからのスタートをお勧めしたい。
自分のこれまでのキャリアで内面充実していた時、その要因(条件)になるものは何か、充実感を下げる要因は、他人から評価された仕事、その中でやったこと、できること、自分の得意な優位は何か、また、苦手に思うことは何か、自分の大切にしている価値、判断の基準、よりどころは何か、そして、「収入」「人間関係」「肩書・名誉・自尊心」「能力と適正」「自己実現」を1~5段階で自己評価してみて欲しい。
これからはその道のプロフェッショナルにならないと、知識仕事人として生きてゆけない。プロフェッショナルと呼ばれる人たちの共通事項は、常に自分自身の棚卸を行い、ドメインの設定を時々繰り返している。そして、キァリアドメインを設定するに当たり、まず初めに、自分の「やるべきこと」、今後の制約条件はあるかどうか。
例えば、「家族を養わなければならない」「地元に戻って家業を継がなければならない」といった自分が望むと望まざるに関わらず、人にはそれぞれの事情、制約条件がある。「やりたいこと、好きなこと」を優勢させるといった考え方で選択するにも、棚卸の際は「やるべきこと、制約」の現実と向き合い確認することは自分を納得させるためにも大切だ。
「今」自分が置かれている状況を客観的に整理することは、自分自身の姿を眺めることができる。
次に、「やりたいこと、好きなこと、あるいは志」は何か?
なかなか言葉にして出せる人は少ないものだが、これまでのキャリアの中で「最高に充実していた仕事の瞬間」は何をしていた時か。人からも高いく評価されていた時、また、「あの人のようになりたい」憧れの人。といった視点でポジティブに夢をみることである。
そして3つめの視点として、自分の「やれる、できる」ことは何か。
これまでの経験から身についた知識や能力、専門知識、技能。あるいは、コンセプチュアルスキル、コミュニケーションスキル、人を楽しませる、元気づける、納得させるスキルなど、自分では以外と気がついていないけど他人から見ると価値あるものを自信を持って確認して欲しい。
以上、3つの視点から自己の棚卸をしてして欲しいが、その中身は進化し、変化もする。しかし、大切なのは、棚卸の結果そのものではなく、今後の自己のドメインをどう定めるかが大切である。「やるべきこと」を無視しても上手くゆかず「やりたいこと」でなければエネルギーが沸かない。「やれること」から大きく離れと、労力の浪費に終わってしまう。
会うたびに大きく頼もしく成長し自分を確立している知識仕事人のプロたちは、3つのバランスに焦点を当て自分ゴールを設定し、達成プロセスで「やれること」と「やりたいこと」の輪を大きく広げている。
自分を生かすドメインを設定する「知識仕事人の個」のあり方に、未来の「ありか」が見えてくる。

投稿者: 吉井 日時: 17:17 | パーマリンク
第29回 新世紀を迎え
2001年01月01日
21世紀から、20世紀を眺めてみると「国」から「会社」、そして「個人」へと重心が移動してきているように見えてくる。
その要因として、知識仕事人の平均寿命が驚くほど伸び、企業寿命が確実に短くなっているからと思える。更に今後、グローバル化と競争激化、急激なイノベーションと技術変化により、企業組織の寿命はいっそう短くなっていく。これからは特に知識仕事人が、企業組織よりも長生きし、第二の人生のために、新しいキャリア、新しいアイデンティティ、新しい環境を求めてゆくことが大きなトレンドとなって時代をリードしていくと考えられる。
今日のアメリカでは、40%は、知識仕事人だといわれているが、日本もやがてそうなる。そして、こういった人たちは頭の中にある知識を所有し生産をすることによって新しいワークスタイルを築いてゆく。SOHO人口が4000万以上いる現状は、そんな表れでもあると思える。
1950年代から60年代にかけて制度化された日本企業の終身雇用、年功序列制度は、過去のものとなり、これから先の企業の姿はどのように変貌するのか誰にも分からないが、今日とはまったく異なるものになることは明らかだ。
これまでの事業の成否はコスト格差、要はいかに安く作るかが事業戦略の有無であった。しかし今日では事業の成否は、安さだけの戦いから価値の提供に変わりつつある。そしてこの目に見えない価値を生み出す知識、知恵をどう生かすかの有無が企業間の格差につながる。 企業(以前30年が企業寿命といわれていたが、今は更にはるかに短い)よりも長生きする知識仕事人(40年以上)は、生産手段を所有し、しかも、その生産手段は個々の頭の中にある携行品である。生産手段たる知識は、他のいかなる資源とも異質であり、専門分化して、初めて意味、価値をもってくる。例えば、人事評価コンサルタントが真価を発揮するのは、人事評価に専門分化しているからであり、戦略、財務、システムにはアドバイス、サポートは出来ない。このことは、教育、医療などあらゆる職種の知識仕事人においてもいえる。
これまでの企業内での中間管理職は、90年代に入ってから知識経済ではあまり活躍の場は見当たらなくなってきている。今後、管理者として求められるのは、知識ワークと知識仕事人をマネジメントするプロ管理者(プロデューサー)になることである。
パーティなどで出会った40~50代の人に何をしているか伺うと決まって、「○○で働いている」「マルマル銀行にいる」と、会社の名前で返ってくることが多いが、若い人たちは「デザイナー」「システムエンジニア」「CPA会計士」といった答えが返ってくる。今後、知識仕事人の帰属先は、雇用される会社組織ではなく、自分の専門領域になり、コミュニティは自らの専門領域そのものとなっていることに気づく。こういった現実から、これからの企業を変えていくものは、技術や情報やeコマースの発展よりも、むしろこの「個の意識の変化」がインパクトを与えると思える。
そして、こういった一人ひとりが、身らの機会、キャリア、成果、帰属、自己実現に結びつけ、明日の組織がどのようなものとなり、どのような組織が繁栄するかを決めはじめている。
企業をはじめどんな組織でも、マネジメントの定義は一つであり、それは、「人をして何かを生みださせる」ことである。今後、企業組織の競争力はこの一点にかかっている。昨今は多くの企業が、同一価格でいかなる原材料も手に入れられ、資金はさまざまな手段によって調達でき、土地、労働、資本からの競争優位は得られなくなってきている。また、肉体労働者を活用してきたほとんどの企業にとって、生産手段として重要な存在ではなくなり、メーカーなど極度に労働集約的な小さな産業は別として、競争上意味をもたなくなった。
今や唯一の意味、価値ある競争力要因は、知識労働の生産性である。そして、その知識労働の生産性を左右するものが知識仕事人であり、企業の盛衰を決めるものも、一人ひとりの知識仕事人である。
今世紀は、知識仕事人として活躍する仕組みを創造できるかによって、繁栄する企業間の差はますます歴然となると思える。
一人ひとりの人間、一つひとつの組織が互いに自己実現できる「縁」を我々も進化しながら知識仕事人集団として機会を創ってゆきたいと年頭にあたり意を強くしている。
本年もよろしくお願い申し上げます。

投稿者: 吉井 日時: 17:17 | パーマリンク