
大学卒業後商社を経て、1979年リクルートに入社。企業の事業戦略を推進する為の人材情報誌事業に携わり、新宿支社長をはじめ、首都圏の営業部長、新規事業開発部長を勤める。
現在は、日本初のヒューマンリソースを活かしたインキュベーション事業会社インターウォーズ株式会社の代表取締役。各企業の30を超える事業開発インキュベーションや自治体の新産業創出のアドバイザーや講演活動等を行っている。事業創造大学客員教授 ニュービジネス協議会理事
第32回 世紀を越えるヒットの法則
2001年02月15日
過日、富良野塾生による21世紀迎えるための新しい「今日、悲別で」という公演を見てきた。これまでにない匂いを感じる余韻の残る演出であった。「北の国から」を初め数々の倉本聰さんの脚本作品は、何故いつもロング大ヒットするのだろうか? 今回の公演は、90年の5期生による卒塾公演で、9年ぶりの東京公演とのこと。企画は85年のテレビドラマの際、形を創るまで2年、その後音や匂いを取り入れご自身も実体験し手直しながら15年の歳月が流れたとのことであった。舞台を共に見ていた前席の人が落盤シーンで体を震わせ、公演が終えた際パラパラと拍手がおこり段々に大きくなってゆくうねりは会場全体が一体となった感動を覚えた。そして、帰る際のそこに集った人達は会ったことはないが、何故か共通の知人のように思えた。
これまでの20世紀は「最大公約数」の時代であった。テレビ番組では以前のお化け番組「8時だヨ!全員集合」のように、子供から大人まで楽しめることがヒット条件だった。
その後社会の細分化が進み、「数%の倍数」の時代に変化してきたように思う。広い世代や地域でのヒットがなくなり属性を絞り、ターゲットを絞り込むほど発火しやすく、その後、話題とムーブメントを起こし波紋マーケティングによってヒットの規模が決まる。プリクラや、宇多田ヒカルなどのヒットはその典型に思える。また、最近の生活者や消費者は「納得できるもの」を厳しく求め、思いつきやハプニングといった表層的なものでなく、「お金や時間を費やすなら、きちんと創られた本物の良いものが見たい、欲しい」と要求する。
倉本さんのように現実直視でこだわりとテーマを持って創作続ける「本物」を求めている。
また、永年好意にしているヨドバシカメラの藤沢社長に、「4000億の売上とはすごいですね」と申し上げたら「本物を安く売ればいいんだ。ルイビトンのバックは日本人の女性が一番買っている、この前ルイビトンの方がこられて言っていたよ」と・・。
これからは、自分の心を常に濡らして、絞れば水を出せる状態にし、2~3年の一過性のブームでない価値ある「銀座の虎や」「新潟の加島屋」のような、21世紀は「長く続く、目に見えない価値をもった物」が力を持つ時代だと思う。

投稿者: 吉井 日時: 17:19 | パーマリンク
第31回 プロ仕事人の付加価値と報酬
2001年02月01日
過日、アメリカの話題ベンチャー企業のトップと経営戦略について話す機会があった。米国ベンチャーの競争優位は、技術、特許、独自のビジネスモデル、そして何にも増して、メンバーのやる気・・日本のベンチャーとほとんど変わらなかった。しかし、大きく異なっていたのはトップの年収とメンバーの報酬体系。 営業職は、グッドワーク・グーペイ成果報酬、技術職は固定報酬(営業の半分に満たない)とストックオプション(極めて大きい)。考え方は、技術メンバーは辞められと困る。ゴールまで共に歩んで欲しいので、目標達成したら大きなインセンティブとしてストックオプションを与える。営業は、仕事の結果に対しジャストインタイムの報酬。 そして、経営ボードメンバーは、利益に対してシェア。株主は、配当とキァピタルゲイン。日本のそれぞれの役回りに対する報酬の実態とは、考え方も額も全くかけ離れたものであった。
これまでの日本企業は、昇進昇格を基軸に縦ライン給与システムを組み立ててきたが、スリム化、フラット化、管理者の増加などで成り立たなくなった。
今後企業社会において、ますます管理者ポストは少数に集約され、一部の人がマネジメントのプロの道を歩むことになる。このマネジャーが存在する意味は、自らのビジョンを持ち経営の意志を受け、組織の創造性を生み出し、競争力を高めるリーダーシップにある。
これからは、知識仕事人としてある分野における専門性の高いプロとして、会社内ではその分野で3本の指に入り、その人がいなくては仕事が成り立たないという存在が求められる。
仕事人が1つのことを6年、深く追い求めれば間違いなく専門家になり得る。調整マネジメントを学ぶのではなく、自己エネルギーを一つの分野に集中して投入する「選択と集中」が個人にも通じる。
そして経営サイドとしては、そういった知識仕事人のプロを処遇するには、完全年俸制と価値に見合った待遇職が必要である。管理ポストに就いて雑事が増え、専門性や充実感が失われるのを避け、個人としての能力と業績に応じて資格や給料が上がれば必然的に会社の業績も上がる。こういった人は、ラインの者よりも成果価値によっては年俸が上がり、完全年棒制の人は、報酬にプロ野球選手の様に上限を設けないのも大切だ。
これまで専門職制度といった職をよく耳にしたが、多くの企業で機能しなかったのは、昇進してもせいぜい専門部長止まり。ラインにいる部長の下といったポスト。どうも日の当たらないイメージで年功対応職といったケースが多い。年収もライン部長より低く、頭打ちとなっていた。これでは、専門職を目指すメンバー達が育つはずもない。 思い切った人事処遇として、最近話題のミスミの年棒6300万部長や、リクルートのフェロー制度、ソニーフェローといった価値を生む人は、これまでの人事制度の延長でない上限のない年俸制度、副社長待遇までのポストを創れば人も会社も生きてくる。
こういった知識仕事人のプロは個人の働きだけで収支的にペイし、組織ポストに就ける必要がなく、その人のもたらす利益価値の範囲で報酬を決めれば、何人いてもよく、多いほど会社は儲かる。 リストラとして、ライン管理職の対象者を何とかしたいといった声が後を立たないが、こういったプロを確保することが、これから益々企業が生き残りを賭けるには必不可欠となってくる。
最近、経済界に様々な異変が起こっている。その一つに、ドコモをはじめ子会社が親会社より短期間で時価総額が大きくなってきている新規事業会社が増えている。意志決定の早さをもった小さな本社で、戦略を推進するプロの仕事人を抱え、マーケットに向きあった付加価値報酬が一人ひとりのモチベーションを高め大きな競争優位を築いていることが、共通の要素として見えてくる。

投稿者: 吉井 日時: 17:18 | パーマリンク